サクラテラス

さくら通りに建つ小さな棲処

 

「棲む」は「住む」ではなく、生物が生息するという意味。家を建てる前は雑草が生え、団子虫やコオロギが草や土の中に沢山住んでいた。一級建築士でもある住まい手は、自分も同じ生き物として、ここに生息するための家を建てようと思った。 最初に土地を目にしてから、自分の建てたい家のイメージを固めるまでに約一年の構想期間を費やした。LDKを一階にするのか、二階にするのか。建築面積が40%という厳しい条件の中で、出来るだけ部屋を広くするためにはどうするのか。構造はどうするのか。外観のイメージはどうか。内観のイメージはどうか。会社から帰宅して、子供をお風呂に入れて、それから日が昇るまでが住まい手の勝負の時間だった。考えの行きついた先は、さくら並木通りに建つ、その場所でしかない家を造ることだった。

サクラテラス外観 サクラテラスデッキ

一階のリビングの延長にあるテラスは、前面の桜並木を眺めながらくつろげる。

天気のいい日にはリビングのテーブルをテラスに持ち出して、屋外リビングとしても活用できる。

通りとテラスの境界に建つ塀は視線が干渉しない程度に高さを抑え、街に対しても配慮をした。

建築面積が小さければ、建物の内と外を効果的に使うことが快適な暮らしを実現するポイントになる。

外観は桜並木に映えるよう、ガルバリウムと吹付塗装を使用して和風の外観とした。

北側斜線が厳しいこともあり、建物の形状はスッキリとした片流れの屋根とした。

サクラテラスキッチン 

SE構法の採用により、広々としたリビングを実現。キッチンの奥には水回りスペースがある。

床材は桜の無垢材フローリングを使用。桜にちなんだ材料を使うことは、住まい手、設計、施工、皆共通の想いだった。

 

サクラテラス格子  
サクラテラス障子 

玄関とリビングを仕切る建具は下側を開閉できるように製作。

この開閉できる部分は「無双窓」と呼び、古くから採光や通風の為に用いられてきた建具の造作技法のひとつ。下側に無双窓を設けておくと、夏場、低い位置を流れる冷たい空気がリビングに流れこんでくる。そうすれば夏は過ごしやすくなる。この無双窓のアイデアは、住まい手が長年過ごした実家にあったことから、今回の家づくりでもその記憶を踏襲しての採用となった。今は子供が楽しそうに開け閉めをしている。

サクラテラスキッチン 

キッチン越しに親子の会話が弾む。カウンターサイドには料理本用にマガジンラックを設えた。

写真奥の勝手口からは南側の庭へと出る事が可能。家事動線にも配慮した。

 カウンターの腰壁には外壁と同じタイルを使用し、ここでも内外の一体感を演出している。

 

 

サクラテラス手すり サクラテラス階段

サクラテラスの階段は、単に昇り降りするだけの階段ではない。昇り降りする他にもたくさんの機能を持っている。2階のホール南側に設けられた窓から夏には心地良い南風が吹き込み、冬には暖かい日光が段板の隙間から1階へと差し込む。階段に腰掛けながら雑誌を読むのもいい。そのときは段板がベンチになる。満月の夜には月明かりに照らされて、幻想的な空間となる。設計段階から月明かりの話を聞き、支え壁のカーブには月をモチーフにしたデザインを盛り込んだ。

サクラテラス窓 サクラテラス廊下
階段を上がると、2階の床と同じ高さでデッキ材を仕上げたバルコニーがある。床だけではなく、壁や天井も印象を合わせ、内外の境界が曖昧になるような効果をもたせている。こういった外部的な干渉空間があることで、家を広く感じることができるのはもちろんのこと、晴れた朝にはバルコニーから陽が差し込み、雨の日には水の跳ね返りや雨音に耳を傾けたり、と家の中にいながらにして外を感じることが出来る。バルコニーの袖壁に塗られた朱色は、住まい手のこだわりと思い出がつまった色。通りを歩いているとこの朱色がチラリと見えるアクセントになる。廊下の壁紙は袖壁に合わせて選択。壁紙は階段の壁、キッチンの天井へと繋がってゆき、リビングのアクセントにもなっている。外で見えたアクセントを内でも見せることで統一感を持たせる。
サクラテラスベッドルーム  主寝室には約3畳のロフトがあり収納スペースとして使用する。木製のルーバーを設け、荷物を置いても目立たないよう工夫した。ロフトはしごは取り外し可能なものを選択。使わないときはクローゼットに収納しておく。
サクラテラス子供部屋 子供部屋。ロフトはベッドルームとして利用。西側に設けたスリット窓を開けるとテラスが見える。 
サクラテラス のれん 脱衣所と洗面所を仕切っているのは、オーダーメイドののれん。住まい手自らデザインし、浅草にあるのれん屋で製作をしたごだわりの一品。南北に長い空間なので、風通しが良く、洗面所と浴室の窓を開ければ、のれんに描かれたサクラ吹雪がひらひらと一年中舞う。 
サクラテラス洗面所 のれんの桜が散った様子。 洗面化粧台の上に明かり取りの窓を設け、日中は自然光で十分明るい。 床は風呂好きのご主人のご希望で、天然の竹タイルカーペットの市松張り仕上げ。 浴室窓の外には前庭も製作。視線もよく抜けるので、より広々とした空間に感じる。

竣工:2012年  延床面積:89.88㎡  木造(SE構法)

設計:大榎涼介 + カサボン住環境設計(井田晋介、関泰良)  施工:株式会社 参創ハウテック

撮影:後藤徹雄

 

御施主様ブログ:サクラテラス通信

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