国立の家

細長い敷地には、どのように向かい合いましょう。
家の形は敷地に左右され、その敷地の形は世相に左右されるもの。その昔、京都で間口に応じて税が決められ、細長い町家が現れました。いまは、大きな土地から出来るだけ多くの敷地を切り出そうとする結果、これまた細長い敷地によく出会います。しかも南北方向に長いとなると、少ない南面に如何に間取りを納めるのかが一番の関心事となります。だってリビングもダイニングも寝室も明るい南に向けたいのですから。ここは先人に知恵を拝借し、京の町家に倣って坪庭のシステムを間取りに加えてみるという手法を使ってみましょうか。
ということで、この家には「坪テラス」を設えてみました。坪テラスで家を窪ませると、そこに新たな南面が出来上がるという仕掛けです。2FのLDKは、建物の北側半分に位置していますが、坪テラスに面する南向きの窓から、ちゃんと陽射しをいただくことができるようになりました。

kunitachi01

2F北側に位置するLDK。奥に見える掃き出し窓の向こうが坪テラスです。坪テラスに注いだ陽射しの反射光で、ふわっと柔かな明るさが室内に広がります。

kunitachi02

ある冬の日の朝8:00~12:00の陽射しがどのようにLDKに差し込むのかを検討するためのシミュレーション。直達日射に加え、この画には表れない反射光で室内が明るく、暖かくなることが予想できました。坪テラスがしっかりと効いてます。

kunitachi03

梁や柱を見せるのがお好みと伺い、屋根を支える構造材を積極的に見せました。複雑に見えるようでも、そこには一定のリズムを忍ばせます。それがプロのデザインの隠し味。

kunitachi04

そして間接照明のご要望には、このように答えを差し上げました。天井近くに棚を作って光源を隠すと、その棚の上がホコリの吹きだまりになります。掃除は面倒だし、下手したら火事の原因にも。そこで見せた梁の上にスポットライトを置き、勾配天井に当てた光を床に落とします。これも立派な間接照明。この方が楽にハタキも掛かりそうでしょ。

kunitachi05 kunitachi06

キッチンの背面収納もオーダー製作です。皿やコップを仕舞うためだけの収納ではなく、階段部分まで延長してリビング回りの小物類も仕舞えるリビングシェルフとしての役割も担っています。そして、ここにもひと工夫。じつは、このカウンター、高さが75cmでキッチンより10cmも低く設定してあります。これが炊飯器からご飯をよそうにしても、ちょっと腰を掛けるにしても、女性に丁度よい使高さ。更に、カウンターを下げた分だけ、吊り戸棚の高さも下げることができるので、普段手の届く範囲がグッと広がります。

kunitachi07

2FのLDKと子供室を繋ぐ廊下。坪テラスから射し込む朝日が、階段を通して1Fの廊下まで心地よく照らします。小さなお嬢さんもご満悦。

kunitachi08

外壁はガルバリウムを水平方向に張り、安定感を感じさせる外観に。写真手前が北側のアプローチ。こちら側が前面道路です。家族を迎えるシンボルツリーはハイノキ。

kunitachi09

大きめの靴収納を造作家具で用意しました。これでも収まらなければ、靴のまま入れる玄関収納へ仕舞います。子供の外用オモチャやレインコートもその中へサッと放り込みます。

kunitachi10

玄関と2Fを結ぶ1Fの廊下。明るい玄関を曲がると、このやや暗い廊下があり、その先にまた明るい階段が待つという演出。明暗の変化を目の当たりにすることで、自然と2Fのリビングへと導かれます。

kunitachi11

1階の水回りはトイレ、洗面化粧台、洗濯スペース、浴室がひとかたまりになっています。人により好みが分かれる配置ですが、これが出来ると廊下の面積をより小さくすることが出来、より豊かな居場所を作るためのきっかけにもなるのです。

kunitachi12

アプローチの植栽は、ほぼすべてご夫婦で手を入れました。芝生の植え込みはご主人が、コンクリート平板の隙間には、奥様が蒔いたクローバーの種が芽を出しました。植物が根付くと、外観は単なる建物から「家」になるから不思議です。

竣工:2010年     延床面積:113.66㎡   木造(在来軸組構法) 2階
設計:田村貴彦   施工:株式会社 参創ハウテック
撮影:工藤朋子

ページ上へもどる